満月は人を見上げさせるのが上手で、朝食は人をテーブルへ戻す。八神純子の『FULL MOON』は両方の尺度を持つ。表題曲に加え、「ハートブレイクホテルで朝食を」があるのだ。1983年12月5日発売の本作は、満ちた天体を題名に選んだからといって、人の生活まで欠けのない円に整えない。大きな光と、なお食べなくてはならない食事が、同じプログラムに入る。ロマンティックであることは、日常を消すだけでなく、日常が残り続ける方法にも関わる。
本作は新人の最初の試みでもない。八神は1978年に「思い出は美しすぎて」でプロ・デビューし、公式ディスコグラフィは1983年に『LONELY GIRL』『恋のスマッシュヒット』『FULL MOON』を並べる。この順序を、創作力の伝説へ膨らませる必要はない。それでも位置は見える。すでに仕事を続ける歌手が、同じ年の中で差し出した、もう一つのまとまったプログラムなのだ。時期全体を一言でまとめるより、作品同士の違いから知っていける。
『FULL MOON』では「NATURALLY」と「黄昏のBAY CITY」が隣り合い、ほかに「陽だまりのあなた」「綿雪&銀紙星」もある。自然、都市、日差し、人工の星は、すべて同じ光源に従うわけではない。とりわけ紙の星は面白い。本物の星ほど遠くない代わりに、人の手で作れる。題名をたどると、人工と自然が一緒に存在できる世界が見えてくる。明るさは空だけから来る必要がなく、人が置くことからも生まれる。
すると「満ちる」とは、隙間がないことより、十分に収められることかもしれない。街と部屋、「NO!」という拒否と「FOLLOW ME」という招きにも席がある。八神を特定の都会の夕景と強く結びつける聴き手にも、広い視野が開く。歌手は同じ看板の下に立ち続けなくてよいし、全作品を同じ時刻の照明で照らす必要もない。夜は壮麗であり、朝食はそれでも来る。アルバムのまとまりは、違いを排除するのでなく、同じ、人のいる世界に属させるところにある。