午前四時は、ポップスの題名として妙に精確な時刻だ。夜はまだ終わらず、翌日の予定はもう迫っている。大貫妙子が1978年に発表した三作目『MIGNONNE』には「4:00 A.M.」が入っているが、一枚全部がその時計のなかに閉じ込められているわけではない。前には「横顔」、後ろには「突然の贈りもの」がある。少なくとも題名の水準では、単一の夜景より、人や世界とのさまざまな距離が並んでいる。
公式クレジットを見ると、編曲は瀬尾一三と坂本龍一が分担している。作品全体に一色の時代感を塗るより、この事実のほうが面白い。同じ書き手の歌が、複数の編曲上の判断を通ってレコードになる。協働を語る意味は、名前の欄を賑やかにすることではない。変化の背後に具体的な制作の仕組みがあると知ることだ。大貫の作家としての連続性と、編曲者の違いは打ち消し合わない。その緊張から一枚のまとまりを考えられる。
印象的な題名の一曲を、アルバム全体の呼び名にしてしまうことがある。図書館が最もよく開かれる一ページだけを保存するようなものだ。間違いとまではいえないが、尺度は変わる。午前四時は入口になっても、ほかの歌まで同じ時刻に従う必要はない。それらを見直すには、作品を最も伝えやすい要約へ変える手を少し止めればよい。レコードは索引語より大きくてよく、作者も聴き手の選んだ時間に永久に住む義務はない。
『MIGNONNE』には、その広さを戻してみたい。1978年の眠れない東京を架空に描くことも、歌の語り手を大貫の私生活と同一視することも不要だ。確認できる題名、署名、配列だけで、十分に問いは生まれる。一人の作者のもとで違いはどう成り立ち、部分の魅力はどう全体へつながるのか。午前四時のよいところは、やがて過ぎることだ。レコードは机に残り、次の曲を考える余地も残っている。