「五時以降」は、短い時刻表であり、名前のない通行証のようでもある。角松敏生の1984年作『AFTER 5 CLASH』はそれを題名の中心に置き、一日の境目と、その向こうの可能性を考えさせる。退勤時刻という概念の不思議さは、自由に共通の時間を指定するところだ。全員の昼が一斉に終わり、夜も遅刻せず引き継ぐかのように。題名はそんな都市の想像を誘う。ただし「衝突」という語が、時計の望む整然とした交代を少し怪しくする。
公式の曲目には「Midnight Girl」「Airport Lady」があり、「Will you wait for me」「I need you」もある。人が時刻で呼ばれ、別の人は場所で呼ばれ、そのあとに待つことと必要とすることが現れる。題名を並べて読むと、都市は輝く建物の集まりから、人間同士の時間を調整する難題へ変わる。誰が出発できて、誰がまだ待っているのか。自分の時間を他人の時間と合わせられるのか。夜の魅力は、この完全には同期できない事情のすぐそばにある。
公式ディスコグラフィでは「Step into the Light~After 5 Crash」が一項目として結ばれ、光への誘いが衝突に直接隣り合う。光は宣伝の絵が使う、手早い約束でもある。明るくなれば物事もうまくいきそうだ。しかしこの組み合わせには、別の読み方もある。見える場所へ出ることは、出会いと行き違いと摩擦の起こる場所へ入ることでもある。曲を一続きの物語にする必要はない。題名同士の関係だけでも、夜は背景から構造へと変わる。
本作に似合う図は、渋滞を知らない自動車より、一つの時計と少しずつ重ならない経路かもしれない。自由時間は空白の時間ではない。欲望、関係、移動を、もう一度配置しなくてはならない。『AFTER 5 CLASH』は、日常的な目盛りにそうした問いを圧縮する。五時を過ぎても都市は動き、光へ入る人たちも昼の自分を完全には置いてこられない。夜が面白いのは、引き継ぎが最後まで終わらないからでもある。