『BITTER AND SWEET』は、苦さと甘さのどちらかを選べとは言わない。並んだ二つの言葉を、アルバムを読むための案内と考えてみたい。異なる感触は同居でき、まとまりは全部品が似ていることだけから生まれるわけではない。ワーナーが示す初出日は一九八五年四月三日。ここで別に記録するCDは二〇一四年発売のWPCL-11728で、二〇一二年デジタル・リマスターを使う。作品の登場、再発商品の発売、マスター処理という三つの時間を分けると、再会の輪郭も明確になる。
全十曲では、制作の責任の置き方が変わっていく。「ロマンティックな夜だわ」はEPOの作詞・作曲、清水信之の編曲。「UNSTEADY LOVE」では角松敏生が三役を兼ね、「APRIL STARS」は吉田美奈子の作詞・作曲と椎名和夫の編曲である。クレジットを通して見ると、複数の文法が一人の歌手のもとへ届いている。この配置だけから録音現場の会話を想像することはできない。しかし、一人に集約される役割と、二人の受け渡しによって成立する仕事を比べる手がかりにはなる。
順序にも固有の提案がある。冒頭の「飾りじゃないのよ涙は」にはアルバム・ヴァージョンの表示が付き、その次にEPO作品が続く。六曲目には角松の「UNSTEADY LOVE」が置かれ、最後を「APRIL STARS」が閉じる。位置や版の表記は小さいが、すべてを同じ平面に置く再生リストに対して、別の見方を与える。一曲は独立して選べると同時に、前後関係の中に置かれた部分でもある。曲順へ戻ることは唯一の正しい聴き方を命じるのではなく、比較できる関係を増やすのである。
シティポップとの接点も、懐かしい色調の画像より具体的だ。EPO、角松、吉田という名前は作者の仕事の交差を示し、中森の歌唱はその交差を別のスターの表現へ運ぶ。この協働を橋と考えるなら、両岸に文化的な上下を作る必要はない。著名な作家が訪れたから初めてアイドルのアルバムに価値が生じるわけでも、他の人が歌えば作者の仕事が消えるわけでもない。役割を分けて読むことで、互いを小さくせずに関係を記述できる。
結局、題名が残すのは、違いを急いで解決しない余地なのだろう。苦さと甘さを平均して薄い味にする必要はなく、複数の作者を常に一致団結した集団として描く必要もない。確認できるのは、作品、曲順、日付、そして分担である。それらがどう一枚になるのかは、聴き手へ開かれた問題だ。十曲をまとめて眺め直すと、単に曲数が増える以上のものが戻ってくる。よく知る歌手の声と、それを通過する異なる制作の関係を、同じ縮尺で見るための視点である。