中森明菜をシティポップの地図に置くとき、面白いのは新しい札を貼ることより、地図の縮尺を変えることだ。ワーナーの資料では、レコード・デビューは一九八二年五月一日の「スローモーション」。そこから広がったポップスと歌謡曲の歩みを、一つの色だけで塗り切ることはできない。ここで選ぶ入口は、八五年の『BITTER AND SWEET』と八六年の『CRIMSON』である。二枚に絞ることで、歌い手と作者の関係がかえって具体的に見えてくる。
前者に収められた「ロマンティックな夜だわ」はEPOの作詞・作曲、清水信之の編曲。「UNSTEADY LOVE」では角松敏生がその三役を担う。同じ中森の歌唱を中心に置きながら、制作の分担は一曲ごとに違う。ここには、解釈する歌い手を考える手がかりがある。届いた曲をすべて同じ製品に変える装置でも、有名な作家の名前に囲まれた空白でもない。異なる仕組みの楽曲を一人の表現として受け止めること自体が、音楽を成立させる仕事なのだ。
『CRIMSON』では、その配置がさらに変わる。竹内まりやと小林明子が五曲ずつを提供し、竹内作品を椎名和夫、小林作品を鷺巣詩郎が編曲した。しかし曲順は作者別に五曲ずつを並べたものではない。「駅」は二曲目、「OH NO, OH YES!」は五曲目に入り、作家の系列が互いの間を通る。この構成を、一種の展示方法として読むこともできる。同じ歌い手と順序が、個々の作品にクレジットの一覧だけでは得られない文脈を与えている。
ここでのシティポップは、全活動を決定する分類というより、この曲から誰へ進めるかという問いである。EPO、角松、竹内の名前は、実際にたどれる答えになる。アイドル歌謡と作家のポップスを上下に並べる必要もない。誰が言葉を書き、誰が曲を書き、誰が編曲し、誰が歌ったか。具体的な役割の接続を調べる方が、ある音楽が別の音楽へ「成長した」と語るより、多くのことを説明してくれる。大衆的であることと、細部を読む価値があることは両立する。
配信で再び出会う際には、時間の縮尺にも注意したい。初出の年、リマスターの年、CD再発の日付は、同じ出来事ではない。区別しても、気軽に聴く楽しみは減らない。むしろ再会の相手がはっきりする。中森がこの地図に加わる意味は、有名な名前が一つ増えること以上にある。複数の作者から来た道が一つの声に出会い、そこからまた別の作品へ続いていく。すべての道の始点でなくても、歌い手はその交差点の中心に立てるのである。