電話番号は、かつて覚えておくものだった。その仕事の多くをスマートフォンが引き受けた今も、大橋純子の「Telephone Number」は日常の道具を題名に残し、旋律にダイヤルできそうな輪郭を与えている。作曲は佐藤健、作詞は三浦徳子、編曲は萩田光雄。ごく普通の名詞の周囲に三人の名前が集まる。生活の小さな設備を、人々が繰り返し持ち歩きたくなる感情の容れ物へ変えることは、ポップスの得意な仕事なのだ。
佐藤と大橋のつながりは、一曲の作曲クレジットだけではない。ユニバーサルの伝記によれば、大橋は上京後に佐藤と知り合い、ヤマハ音楽振興会でのアルバイトを紹介された。そこでの仲間たちと、管楽器を含むバンド、スーパーマーケットを結成する。スターの出発点に期待される劇的な事件ではないかもしれない。しかし、仕事、同僚、一緒に演奏できる人という、音楽生活の具体的な手触りが残っている。精巧なレコードも、こうした普通の関係から生まれることがある。
佐藤の名前は、「陰の天才」という神秘的な人物像より、歌手が使える音楽を作る能力へ目を向けさせる。旋律には独自の輪郭が必要だが、声が入っていける余地もいる。それは創作であると同時に、他人へ託されるものでもある。「Telephone Number」の分担は、この関係を分かりやすくする。作曲したからといって、佐藤が言葉や録音のすべてを一人で所有するわけではない。特定の責任を担うことで、むしろ制作の中の位置がはっきりする。
シティポップは距離から想像を生むが、電話はその距離を縮める道具だ。題名を現在の連絡習慣と並べると、技術の変化に比べ、誰かとつながりたいという願いはそれほど簡単には古びないと分かる。この地図で佐藤を示す点は、歌と基盤の両方へ開かれる。一方は日常の言葉を覚えやすくし、他方は音楽家が出会えるようにする。残るものは昔の年代から借りた装飾だけではない。電話が鳴るより前に、どれほど多くの人の仕事がその接続を可能にしたのか、という長持ちする問いでもある。