山下達郎のディスコグラフィでは、一九八〇年の二作品が興味深く並ぶ。ヒットしたシングルと同名の『RIDE ON TIME』、そして自分の声を重ねた無伴奏コーラスの『ON THE STREET CORNER』。聴衆の広がりと、演奏する人間の数は、別の物差しで測られるらしい。海沿いの道路を思い浮かべる前に、建築を考えてみたい。同じ素材でも、置き方によって窓にも階段にも、建物を支える壁にもなる。
その発想を読むための背景には、まず共同作業がある。一九七三年、大貫妙子らとシュガー・ベイブを結成。七五年の『SONGS』は大瀧詠一のナイアガラ・レーベルから発売され、翌年には『CIRCUS TOWN』でソロ活動を始めた。バンド、レーベル、個人名義。それぞれは名声への通過点である以上に、責任の配置が異なる仕組みでもある。個性とは突然降ってくる天気ではなく、人との仕事を通して形になり、次の場所へ持ち運ばれる方法なのだろう。
竹内まりやとの仕事では、その分担が読み取りやすい。『VARIETY』は全曲を竹内が作詞・作曲し、山下がプロデュースした。隣り合うクレジットは、同じ役割を意味しない。制作の力が作者を消すこともなければ、作者がいれば録音が自然に完成するわけでもない。ジャケットの大きな名前だけを覚えがちな私たちにとって、これは静かな協働の授業になる。抽象的な創造性が、具体的な仕事と名前に分かれて印刷されている。
『FOR YOU』にも、構造を読む入口がある。曲順には独立した歌と、間奏と明記された部分が共存する。音楽には一室を占めるだけでなく、部屋をつなぐ役目もある。そう考えると、曲順は空間の配置としても読める。細部や共同作業に目を向けると、山下という名前は、季節の雰囲気を保証する印章以上のものになる。中心を示しながら、その周囲で働いた人々へも通じる入口なのである。